馬鹿の独り言

物忘れの酷い俺のためだけのブログ

バンナムの平成28年度財務諸表を検討してみた

www.bandainamco.co.jp

バンダイナムコ

日本有数のエンターテイメント企業であり、俺のような古参ゲーマーにとってはとても馴染みのある会社だ。ガンダム仮面ライダー、ワンピースなど、日本を代表する大型コンテンツの版権を持っていることで莫大な既得権益を貪るヤクザ組織でもある。

バンナムが日本のゲーム業界に与えた影響は大きい。スクエニ任天堂などと並び、日本のゲーム黎明期からその成長を牽引してきた。しかし近年では「バンナム商法」と呼ばれる悪質な課金商法をゴリ押ししてくることにより、古参ゲーマーからは蛇蝎の如く嫌われているクソ会社だ。かく言う俺も、バンナム嫌いな人間の1人だ。俺が大好きだった「テイルズ」や「ガンダムVSシリーズ」をクソ課金ゲームに堕落させたことについては、切腹されても許す気は無い。最近で言えば、個人的に大きな期待を寄せていたジョジョの格ゲーも酷い有様だった。

そんな俺が大嫌いなバンナムであるが、何故かしぶとく生き残っている。俺のような嫌悪感を抱えているゲーマーは少なくない筈なのに、どうして未だに生き残っているのか非常に疑問だ。企業とは、良くも悪くも金が無ければ存在できない。バンナムが潰れない理由は、端的に言えば金があるからだ。だったらバンナムの金はどんな状況なのか、この際俺なりに分析してやろうじゃないか。ちょうどこの前、財務諸表の読み方に関する本を読んだばかりだしな。

 

terayuu-hitorigoto.hatenablog.jp

【分析の方法】

今回の分析では、バンダイナムコホールディングスのホームページにて公開されている平成28年3月期決算短信をベースに使う。本当にまともな分析をしようと思ったら、バンナムのみでなく主要な競合企業も併せて比較すべきである。でもそんなこと正直ダルくてやってられないので、今回はバンナムの直近の決算のみを対象する。場合によっては、同社のアニュアルレポートや過去の決算短信も参考にする。

 

【分析結果】

結論から言って、現状では潰れる心配が全く無い優良企業と言わざるを得なかった。

まず注目すべきなのは、資産と負債の状況である。特に流動資産と流動負債の状況だ。流動資産の方が少ない場合、いつ潰れてもおかしくない。

バンナム

流動資産:322,176百万円

流動負債:114,333百万円

流動資産/流動負債=281.78%

負債の部合計:131,031百万円

流動資産/負債の部合計=245,87%

この数値からわかるのは、バンナムはその気になれば借金を全額一括で返しても何も問題無いということだ。現実的にはそんなことはしないものの、仮に借金ゼロにしてしまっても大丈夫という安心感は非常に大きい。こういう状態の企業であれば銀行も金を貸したいだろうと思うので、有事の際にも対応できそうである。

次に目を向けるのは、有形固定資産だ。

有形固定資産合計:53,702百万円

ナムコと言えば、パックマンの時代からゲーセンなどのアミューズメント施設経営というイメージがあった。池袋にはナンジャタウンもある。従って、有形固定資産はけっこう大きく保有しているのではないかと思っていたけど、どうも違うらしい。これは、フランチャイズにより別会社にゲーセン運営を委託していることで、施設を自社名義で保有していないことによると思われる。セブンイレブンなどのコンビニもこういった財務諸表になることが多い。フランチャイズの場合、下請けが出した利益のうち何割かをバンナムが吸い上げることで損益計算書に直接載るため、貸借対照表の数字はコンパクトになる。

アミューズメント施設・機器:12,685百万円

とあるので、数少ない直営店は維持しているようだ。

ここで1つ気になることが出てきた。前回の平成27年度決算短信をチェックすると、アミューズメント施設事業についての言及がある。

平成27年3月時点では

直営店:237店

レベニューシェア:1,046店

その他:10店

だったらしい。しかし、今期の決算短信ではこの店舗情報が消えている。どうやら今期はセグメントを変更したようで、この影響でアミューズメント施設事業が独立して評価されなくなったようだ。セグメント変更は、事業評価を最適化するという名目で、業績の悪い事業を隠すためにされることが多い。パナソニックなんかはお家芸としている。どうもアミューズメント施設事業は「ネットワークエンターテインメント事業」というセグメントに再編されたようで、これはバンナムが出すゲーム全般の業績を集合させたセグメントらしい。ここに少しだけアミューズメント施設事業についての言及がある。経営資源を投入した結果収益は上がったものの、新機種の販売に苦戦して利益は大きく落ち込んでしまっている。この数値は、一度リリースすればボロ儲けになるスマホゲーなどの売上も合計されているため、恐らくゲーセン事業単体で見ればもっと酷い落ち込みなんじゃなかろうか。

ROE自己資本当期純利益率)は、自己資本をどれだけ効率良く使ったかの指標となるため、よく経営成績の指標として設定されることが多い。

今期のバンナム

今期ROE:11.2%

前期ROE:13.2%

と、少し悪化している。悪化の原因は、損益計算書を見ればわかる。今期主要指標の前期との比較は、以下の通りである。

売上高:1.8%増

営業利益:11.9%減

経常利益:14.5%減

当期純利益:8.0%減

売上高は微増したものの、利益が落ち込んでいる。つまり、売上は辛うじてプラスに持って行けたものの、投入した資源を活かしきることができず、結果としてマイナスになってしまったということだ。決算短信を読む限りでは、家庭用ゲーム・スマホゲー・映画・ライブイベントなどのコンテンツを活かしたデジタル製品が好調だったのに対し、おもちゃやゲーセンなど、物質製品が不調だったようだ。まぁ気持ちはわかる。5,000円の課金は平気でやっても、ゲーセンで5,000円使おうとは俺は思わない。損益計算書項目は、決算時点だけの情報を見てもあまり得るものはない。一年間をどう過ごしてどんな投資をしたのかを詳細に知らなければ、総合的な検討ができないからだ。というのも、もしかしたら偶々今年の3月時点では結果が出ていないだけで正しい投資は行っており、4月以後に結果が出始めているかも知れないからだ。この辺りの事情は、未だ公開されていない平成28年度3月期アニュアルレポートのリリースを待つべきである。実際どうなのか気になる人は、4半期速報を見てみればわかるだろう。今回の分析では見ていない。そこまで言及するとキリがなくてめんどくさいからな。

 

【総括】

かなり大雑把ではあるが、主要部分の検討はこんなところだろう。現状、バンナムは余程のことがない限りは大丈夫そうだ。どこかのタイミングで株価が暴落したら、買っておいても良いかもしれない。

それにしても、なんて忌々しいんだ。俺の毛嫌いするバンナムがまさかこんな優良企業だったとは。有為転変のゲーム業界の中でも、バンナムはやはり歴史ある企業であるだけの実力を持っているということか。というか今回改めて思ったのは、バンナムは俺がイメージしていた程にゲーム会社ではなく、思った以上に総合的なエンターテインメント会社だったということだ。俺はゲームばっかやっているのでそう思い込んでただけなんだろうか。言われてみれば、なにかとバンナムのロゴを目にする機会は多い。クソッタレめ。

ゲーム業界で言えば、他に有名どころなのは任天堂スクエニセガといったところだけど、これらもそのうち気が向いたら分析してみよう。特に任天堂は、ポケモンGOがどの程度の影響を及ぼすのか興味がある。今後の観察対象としては良い勉強になるだろう。

山根節/「儲かる会社」の財務諸表

「儲かる会社」の財務諸表 48の実例で身につく経営力・会計力 (光文社新書)
 

 

社畜となった身の上、1つどう足掻いても習得することを避けられない知識がある。

金の知識だ。

人間社会は現状、ほぼ全て金の遣り取りで動いている。それは自分の生活は勿論の事、人生の半分を捧げる会社においても当然のことだ。そもそも会社という組織は営利組織で、その目標が「金を稼ぐ」という手段でもって達成されるのであれば

「金ってなによ」

という疑問が湧くのは当然のことだろう。社会に貢献するにも金が必要だからな。

金に関する知識が無ければ「自分の会社・業界がどんな状態なのか」「今後世情はどうなっていくだろうか」「それを受けて自分や自分の属する組織はどう身を立てていくべきだろうか」「自分の世帯収入で家族を養っていくにはどうするのが最適だろうか」などなど、自分の人生のほぼ全部についての見通しが立たなくなる。金ばっかりで嫌になるくらい、現代人の人生は金に支配されている。

「金」と一口に言っても、そこから更に大きく「経済」「金融」「会計」と3つの分野に分岐する。これらは互いに密接に関連しながらも、それぞれ違う分野であると世間一般では捉えられている。今回は、その中でも自分達の生活で最も身近な「会計」の分野について、一度しっかり学ぼうという欲求が出てきたので、読んだ。

 

日本には「簿記」という資格があって、俺はその中でも決して低くない試験を通過している身なので、簿記会計に関してはそれなりの知識を持っているつもりだ。しかしハッキリ言って、簿記の勉強だけしても価値は無い。あくまで簿記の知識をというのは皮であって、本当に美味しい中身を味わうには、そこから更に深く研鑽を積まなければならない。その本当に美味しい中身とはつまり「財務諸表の読み方」だ。簿記の知識を基に、企業が作成する財務諸表がどのようにできているのかは理解できる。問題はその先で、その数字が何を意味するのかわからなければ意味が無い。

その点、この本はとても参考になった。「財務諸表の読み方」と言っても言うは易しで、その知識を身につけるのはけっこう骨が折れる作業だ。まずROE流動比率など、簿記の試験には出てこない指標の基礎知識を身につける必要がある。この辺りは「投資」の分野である。そこら辺がある程度頭に入ったら、総務省のホームページで経済指標を引っ張ってきて、分析しようとする業界の平均的な状況を把握する。次に、財務諸表を公開している企業(主に上場企業)のホームページに行って、その会社の数年分の決算短信を読み込み、分析する。 決算の内容説明を熟読し、去年と比べてどういう成果が出たとかどう目標が変化しているかなどを把握する。それを数社繰り返して、やっと1つの業界についてまともな知識が身につく。大学院時代には何回かこういうことをやったものだけど、途中でかなりウンザリしてくる。1日2日でできる分析ではない。そんな手間のかかる分析を、著者は会計士や教授としての長年の経験を踏まえつつ、わかりやすく解説してくれている。特に、日本の各業界を網羅的に分析してから、その業界の現状を簡単に纏めてくれているのが非常に助かった。ここまで丁寧にコンパクトに教えてくれる本はあまり無いんじゃなかろうか。

この本はその内容は言うに及ばず、どういう資料を参考にすれば著者のやったような分析ができるのかという方法が、内容からある程度推察できるという点で優れている。この本を参考にして同じようなステップを踏めば、誰でもそれなりの分析ができるんじゃなかろうか。

俺は会計の本はあまり読まないものの、この本は買って良かったと思う。俺もちょっと何社か、簡単に分析してみようか。

 

それにしても、あのウンザリする作業を僅か数百円出すだけで、その筋に人生の大半を費やした専門家が懇切丁寧に教えてくれる。分業は良いね。読書は心を満たしてくれる。人類の生み出した文化の極みだよ。

石田勇治/ヒトラーとナチ・ドイツ

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

 

 

ちょっと前に「帰ってきたヒトラー」を読んだけれども、俺はナチスについて何も知らない。

ティムール・ヴェルメシュ/帰ってきたヒトラー - 馬鹿の独り言

俺は、独裁政権が好きだ。人を従えたり操ったりするのちょー楽しい。リーダーシップと言い換えても良い。いや、別にだからって独裁者になりたいとか言ってるわけではない。人間心理とか、管理システムとか、人類と永遠に切り離せないであろう「権力」という構造に興味があると言っているんだ。勘違いしないでよね。独裁者になるくらいならベッドでごろごろしてる方が好きだし。

そもそも、そんな俺の興味とか以前の話だ。仮にも大学院まで卒業して大人の仲間入りを果たしたっぽい人間として、人類史に消えない傷痕を残した第二次大戦の主役たるナチス・ドイツを全く知らないなんて、恥晒しにも程がある。

そう思ったので読んだ。

 

この本によれば、エーリッヒ・フロムの言っていたことは真実だったようだ。

ナチのイデオロギーは小さな商店主、職人、ホワイト・カラー労働者などからなる下層中産階級によって、熱烈に歓迎された。

自由からの逃走 新版より引用

今回ナチスの歴史を辿ってみるまではそんな馬鹿な話があるもんかと思っていたけど、どうやらヒトラー率いるナチスは、本当に選挙によって民衆から支持され、他の政党を謀略で突き崩しつつ躍進していき、いつしかドイツ=ナチスヒトラーというところまで上り詰めたらしい。正直全く実感がわかない。荒唐無稽な話だ。

他にも、印象的な一文がある。

政府の反ユダヤ政策は急進化した。だが、ほとんどの人が、これに抗議の声ひとつあげなかった。いま聞くと、それも異様なことに感じられるが、人口で一パーセントにも満たない少数派であるユダヤ人の運命は、当時の大多数のドイツ人にとってさほど大きな問題ではなかったのである。

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)より引用

学校ではユダヤ人虐殺が強烈な印象で教え込まれていたし、ユダヤ人は何千万人と殺されたイメージがあったので、当時のドイツではユダヤ人の割合はけっこう高いんじゃないかというイメージがあった。フロイトアインシュタインもユダヤ系だし、先に引用したエーリッヒ・フロムもそうだ。しかし、実際には1パーセントもいなかったというじゃないか。ユダヤ人がこんな少ない割合でしかいなかったとなると、話は変わってくる。全体の1パーセントに満たないなら、1つの集合住宅や地域に数人いるかいないかという程度でしかなかったということだ。そんなんだったら(ヒトラー的な意味での)アーリア人一般市民からすれば、殆ど気にならないかも知れない。俺だって、自分の住んでる地域の回覧板で誰かが亡くなりましたとの報せが回ってきても、正直なんとも思わない。顔も名前も知らない人の訃報を見ても、特にピンと来ないからだ。

それに加えて

ヒトラー政権下の国民は、あからさまな反ユダヤ主義者でなくても、あるいはユダヤ人に特別な感情を抱いていなくても、ほとんどの場合、日常生活でユダヤ人迫害、とくにユダヤ人財産の「アーリア化」から何らかの実利を得ていた。

たとえば同僚のユダヤ人がいなくなった職場で出世した役人、近所のユダヤ人が残した立派な家屋に住むことになった家族、ユダヤ人の家財道具や装飾品………(中略)………動産・不動産を「アーリア化」と称して強奪した自治体の住民たち。無数の庶民が大小の利益を得た。

 ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)より引用

とある。経済学的な言い方をすれば、「富の再分配」を市場メカニズムに任せるのでなく人為的かつ爆発的に引き起こしたわけだ。

これで実利を得た人がどのような気持ちだったかはわからないけど、中にはユダヤ人がいなくなってくれてラッキーと思っていた人も少なからずいた筈である。本の中では「共犯者となった国民」というタイトルが付けられており、正にその通り。望まずして財産を押し付けられたという清い人がいたかもしれないけれど、少なくとも、ラッキーと思った人はヒトラーのユダヤ人迫害に加担してしまっている。しかも、その心理的な障壁は非常に低い。だって待っているだけで良いのだ。自分でユダヤ人を銃殺したりする必要は無い。待っているだけでマイホームが手に入るというのなら、そりゃあ嬉しいに決まっている。

 

「帰ってきたヒトラー」で描かれていたヒトラーは、本当に魅力的な人物だった。実際のヒトラーがどうだったかは知る由も無いけど、正直な印象として、小説で描かれている程に潔い人物だとは思えない。とはいえ現にヒトラーは1つの国を征服しており、それにより民衆に利益を齎したというのもまた事実だ。民衆から支持を受け、君主として上に立ち、国民に利益を施すというのは、リーダーに求められる最も基本的な条件である。内容や結末はともかくとして、ヒトラーはこれを満たすことに成功している。

ヒトラーの何がいけなかったかと言えば、その方法が「人種差別」であったという1点に尽きる。ヒトラーは、第一次大戦の影響で荒廃してしまったドイツ経済の中で立ち上がり、民衆の不満を取り込み煽動して与党を打倒し、遂にはドイツそのものになった。そして国民の圧倒的な支持を受け、投票率・得票率ともに9割強という現代日本の政治家が見たら卒倒しそうなスコアを叩き出した。ユダヤ人迫害から一歩引いてみれば、ヒトラーは確かにドイツ国民にとってのリーダーだったのである。

 

ヒトラーの持つ最も優れた資質は

「人の負の感情を煽動し、崩壊させること」

だったのだと思う。人間社会で生きる俺達も、より良い人生にしようと日々生きているからこそ、時には人の負の側面と向き合わなければならない。そう思えば、唾棄すべき人種差別主義者だからといって無視するには、彼の存在は余りに大きすぎるのではないかと感じた。

 

↓参考文献

自由からの逃走 新版

自由からの逃走 新版