ジェームズ・スロウィッキー/「みんなの意見」は案外正しい
- 作者: ジェームズ・スロウィッキー,小高尚子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/11/25
- メディア: 文庫
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読むのにえらい時間がかかってしまった。
緩そうな本だと思ったけど、ハードな内容だった。
人類ってのは馬鹿の集まりだ。
同じことばかり繰り返して、古代から何も変わっていない。
中東の蜂起とか時折起こる国会前のデモとか見てると
やっぱ少数の傑出した天才が愚民を導くような政体の方が、集団の運営としては優れているんじゃなかろうか。
そう思うことが俺にもある。
しかしちょっと待て。実はそうじゃないんじゃないか。
集団の知恵ってのは、上手く寄せ集めればとんでもない機能を果たすんじゃないか。
そういう本だった。
ネットには「炎上」という現象がある。
どこでキレるかわからないネットの皆さんの嗜虐心に火が付いたとき、その3分後には名前はおろか出身校まで把握されている。
これは正に、この本で書かれている集団の知恵が結集して驚異的な成果を出すという好例だ。
これに関しては悪い(?)例だけど、こういう事例が世の中には色々とあるらしい。
しかし、このような集合知を活かす条件というのは極めて限定的で、それが上手くいかない事例の方が多い。
特に、政治においてはまず機能しない。
みんな大好き民主主義は、実はこういった点においては機能不全に陥りがちだ(それが良いことか悪いことかはおいといて)。
最も重要な前提条件として、達成すべき成果を全員が共通して認識していることが挙げられる。
そして各人が自由に独立して考え意見を表明し、他人の意見に左右されないことも必要だ。
この2つの状態が重なるのは非常に珍しい。
規模が大きくて上下関係に厳しいような組織だと、そんな環境を如何に整えるかで経営者はいつも苦心している。
しかし逆に言えば、集合知を活かせる状況を作ることを目指せば、上手くいくという期待が持てるということだ。
この本は今後折に触れて読み返し、考え事をする時の基準にしたい。