クリス・アンダーソン/ロングテール
ロングテール‐「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: クリス・アンダーソン,Chris Anderson,篠森ゆりこ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: 文庫
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やっぱ天才ですわこの人。
何年か前に「FREE」を読んだ時もえらい関心させられたもんだけど。
うーん
こういう人のことを「賢い」っていうんだろうな。
内容に関しては特に言うことはない。
これは理論を主張するのではなく、現状解説に終始しているために議論すべき部分はあまり無い。
ロングテールの話はとりあえずわかった。
問題なのは、じゃあどうすんのって部分だ。
ビジネスマンの端くれとしては、ここに言及しないわけにはいかない。
まず、この本に出てきたのは、巨大な資本力を抱えた大企業だ。
アマゾン、アップル、ネットフリックス、ラプソディ。
この本はアメリカの本なので、扱われるのも当然アメリカ企業がメインだ。
しかし、日本にもロングテールの支配者たる企業がいくつか存在する。
中でも代表的なものといえば
「ニコニコ動画」
だろう。
ニコ動は、典型的なロングテール市場の支配者だ。
ユーザーは自発的に動画の配信や生放送を行うため、ほっといても活発になる。
運営は場所を提供し手数料を貰う仕組みになるので、寝いていても金が入ってくる。
ロングテール市場を支配するもしくは創り出すのに必要な要素は、以下の通りだ。
①膨大なトラフィック
②ユーザーに自分で働いてもらう
③在庫リスクを無くす
これらの要素を全て得ることができれば、その企業は漏れなく市場の支配者となれるだろう。
しかし話はそう簡単ではない。
膨大なトラフィックを得るということは、ユーザー予備軍の24時間のうち少しを毎日奪うだけの利便性が無ければならないし
そもそも、そんな不特定多数の利用者を集める方法などあまり存在しない。
それこそネットしかない。
だから競合が多い。多すぎる。
俺のようなサラリーマンや場末の中小企業などには、殆ど無理な話だ。
このブログだって、ロングテールの一部分であり
この記事の下の方の広告をクリックすれば
それを拒むには俺がプレミアムユーザーになるしかない。
「そんな金は俺には無い」
ではどうするのか。
思うに、上の要素のどれか1つでもつまみ食いできれば、宣伝効果くらいは得られるのではないだろうか。
以前「だいすき日本」というネパール料理屋がツイッターで話題になった。
日本大好きで日本に店をオープンしたもののイマイチ流行らない。
開店休業状態。
その窮乏をツイッターで訴えたところ
ある時それが一気に拡散され、店がパンクするほどの大賑わいになったという事件があった。
恐らくどこかのタイミングでアルファユーザーの目に留まったからだと思われるが
これは正に「ツイッター」という支配者が持つ②ユーザーに働いてもらう(リツイートによる拡散)という要素をつまみ食いした結果①膨大なトラフィックを獲得できたという好例だ。
この事件が起こったのは随分と前の出来事だけど
ビカス氏のツイッターを見る限り、今でもそれなりの賑わいを見せているらしい。
この話の教訓は何か。
「結局は良い製品やサービスを作るしかない」
ということだ。
ビカス氏の店が今でも賑わっているのは、偶然世の中に広まったからという点も確かに大きいだろう。
しかし、それで料理が不味ければせっかくの客はまた離れてしまう。
今でもそれなりに人気と言うことは、まず単純な前提条件として、ビカス氏の料理が美味いということだ。
そもそもの話
ロングテール市場が成立するのは、俺たちやビカス氏のような小さな生産者が大勢いるからだ。
ニコ動やら支配者層は、今まで表面に出てこれなかった小さな生産者に活躍の場を提供してくれている。
これは十分に社会に対する貢献であるし、正当に評価されて然るべきだ。
俺は敢えて「支配者」という過激な言葉を使ってみたけど、正確には、本の言葉を使えば「集積者」という方が正しい。
なんにせよ
「良いものを作って宣伝して買ってもらう」
という社会のサイクルは、根っこの部分ではまだまだ変わりそうもない。
この話、以前のパックンの話に繋がったりするかもなぁとかじゃあ今の時代で良い製品って何なのよとかも頭を過るけど
それはまた別の機会に考えるとしよう。
↓参考資料